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ターゲットに合わせた書体選びとは?年齢・業種・トーン別の選び方を解説

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ターゲットに合わせた書体選びとは?年齢・業種・トーン別の選び方を解説

自分ではおしゃれだと思って選んだ書体なのに、「お客さんの年齢層に合っていない」「なんだか業種のイメージと違う」と言われたことはありませんか。

書体は、作る人の好みではなく、届けたい相手に合わせて選ぶことで、はじめて狙いどおりに伝わります。

この記事では、ターゲットに合わせた書体選びとは何か、年齢・業種・トーン(雰囲気)ごとにどんな書体を選べばよいのかを、見本を交えて初心者向けに解説します。

ターゲットに合わせた書体選びの基本

まずは、ターゲットに合わせた書体選びがどういう考え方なのか、なぜ必要なのかを押さえましょう。

ターゲットに合わせた書体選びとは何か

ターゲットに合わせた書体選びとは、デザインを届けたい相手(年齢層・職業・好みなど)が親しみを感じる雰囲気や、読みやすいと感じる書体を考えて選ぶことです。

ターゲットとは、そのデザインやサービスを「いちばん見てほしい相手」のことで、「30代の働く女性」「70代の自営業の男性」のように具体的に思い描くほど、選ぶべき書体もはっきりしてきます。

色をターゲットに合わせて選ぶ考え方(ターゲットに合わせた色選びとは?)を、文字の書体に当てはめたものと考えると分かりやすいでしょう。

制作者の好みで選ぶとずれる理由

制作者が自分の好みだけで書体を選ぶと、実際にデザインを見るターゲットの感覚とずれてしまうことがあります。

年齢や生活環境によって、見慣れている書体や「読みやすい」と感じる条件が違うからです。

たとえば、20代のデザイナーが「洗練されている」と感じる細くて小さな文字は、老眼が始まった50代以降の人には読みにくく感じられることがあります。

書体を選ぶときは、「自分がいいと思うか」ではなく「ターゲットにとって心地よく読めるか」を基準にしましょう。

年齢・業種・トーン別の書体選び

ここでは、ターゲットを「年齢」「業種」「トーン(伝えたい雰囲気)」の3つの切り口で考える方法を紹介します。

実際の案件では、この3つを組み合わせて書体を絞り込みます。

年齢層に合わせて選ぶ

年齢層によって、書体に求められるものは「親しみやすさ」から「読みやすさ」へと少しずつ重心が移ります。

年齢層優先したいこと選びやすい書体の例
子ども(小学生くらいまで)学校で習う字の形に近いこと・やさしさ教科書体、丸ゴシック体
10〜20代親しみやすさ・トレンド感ゴシック体を基本に、見出しで手書き風やポップな書体を部分的に使う
30〜50代(ビジネス層)信頼感・情報の分かりやすさ標準的なゴシック体、上品さを出したい場面は明朝体
60代以上読みやすさ・読み間違えにくさ太めで形が分かりやすいゴシック体、UDフォント。文字サイズも大きめに

10〜20代でゴシック体を基本にするのは、スマホやSNSの画面に表示される文字の多くがゴシック体で、ふだんから見慣れているからです。

子ども向けで教科書体が候補になるのは、学校の教科書と同じように、手で書くときの形に近い字の形をしているからです。

たとえばモリサワのUDデジタル教科書体は、学習指導要領に準拠した字の形で、硬筆(鉛筆やペン)で書くときの手の動きを重視しながら、弱視(視力が弱く、メガネなどでも見えにくい状態)やディスレクシア(知的な発達に遅れはないのに、文字を読んだり書いたりすることに強い困難がある学習障害の一つ)にも配慮して作られています。

一方、高齢の方に向けたデザインでは、装飾性よりも読みやすさを優先します。

お薬の受け取りは、1階の3番窓口へお越しください。受付時間は平日9時から17時までです。

NG:細い明朝体を小さく使い、線がかすれて読みにくい

お薬の受け取りは、1階の3番窓口へお越しください。受付時間は平日9時から17時までです。

OK:形の分かりやすいゴシック体を、太めで大きく使う

※右の見本は、端末にBIZ UDPゴシックがあればそれで、なければ標準のゴシック体で表示されます。

左の見本は上品ですが、線の細い部分がかすれやすく、小さな数字も見分けにくくなっています。

右の見本は、線の太さが均一なゴシック体を太めに大きく使っているので、窓口の番号や時間がひと目で読み取れます。

業種・商材に合わせて選ぶ

同じ年齢層がターゲットでも、扱う商品やサービスによって「らしい」と感じる書体は変わります。

ターゲットがその業種に期待しているイメージと書体の印象がそろうと、「ちゃんとしたお店だ」「自分に合いそうだ」と感じてもらいやすくなります。

業種・商材ターゲットが期待しやすいイメージ選びやすい書体の例
金融・保険・士業信頼・誠実・堅実標準的なゴシック体、明朝体、セリフ体
医療・介護安心・清潔・やさしさ読みやすいゴシック体、丸ゴシック体
IT・Webサービス先進的・シンプル・使いやすいゴシック体、サンセリフ体
和食・旅館・和菓子伝統・上質・季節感明朝体、筆文字(見出しやロゴに限定)
カフェ・雑貨温かみ・こだわり・おしゃれ細めのゴシック体や明朝体、手書き風(見出しに限定)
子ども向け商品・教育楽しい・やさしい・安全丸ゴシック体、教科書体

表の「セリフ体」「サンセリフ体」は、欧文(アルファベット)の書体の分け方です。セリフ体は「T」「I」の線の端に小さな飾り(セリフ)がある書体、サンセリフ体は飾りのない書体で、和文でいえばセリフ体は明朝体、サンセリフ体はゴシック体に近い印象です(形の違いは書体による印象の違いで見本付きで解説しています)。

表はあくまで傾向なので、「金融だから必ず明朝体」と決めつける必要はありません。

「この業種のお客さんは何を期待しているか」を考える出発点として使ってください。

トーン(伝えたい雰囲気)に合わせて選ぶ

年齢と業種が同じでも、サービスとして打ち出したいトーン(雰囲気)によって書体は変わります。

たとえば同じ「和菓子店」でも、贈答用の高級店と、気軽に立ち寄れる街のお店とでは、合う書体が違います。

季節の和菓子、はじめました

明朝体:贈答用の高級店らしい、上品なトーン

季節の和菓子、はじめました

丸ゴシック体:街のお店らしい、親しみやすいトーン

※丸ゴシック体は、対応する書体がない環境では通常のゴシック体で表示されます。

左の明朝体では、文字の間隔を少し広げたこともあり、贈り物にふさわしい落ち着いた上品さが出ています。

右の丸ゴシック体では、角の取れた形が、普段のおやつとして気軽に買える親しみやすさを伝えています。

ターゲットの年齢と業種で候補を絞ったうえで、最後に「どんなトーンで話しかけたいか」で書体を決めると、ぶれにくくなります。

読みやすさを重視するならUDフォントも候補に

幅広い年齢層や、さまざまな見え方の人に届けたいサービスでは、UDフォントも有力な候補になります。

ユニバーサルデザインとは、年齢や障害の有無などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように作るという考え方です。

UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)とは、年齢や見え方の違いにかかわらず、できるだけ多くの人が読みやすいように設計されたフォントのことです。

たとえばモリサワのUD書体は、「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読み間違えにくいこと」の3つをコンセプトに開発されています。

同じモリサワ系のBIZ UDゴシックやBIZ UD明朝は、Windows 11の日本語用フォントとして収録されているほか(Microsoft:Windows 11のフォント一覧)、BIZ UDPGothicはGoogle Fontsでも無料で提供されています。

BIZ UDPGothic(BIZ UDPゴシック)の「P」はプロポーショナルの略で、かなや記号などの幅が文字の形に合わせて調整されるため、文章が自然に詰まって見えます。Pの付かないBIZ UDゴシックはすべての文字が同じ幅で並ぶので、表などで文字の位置をそろえたい場面に向いています。

行政の案内や医療機関、高齢の方も使うサービスなど、「正確に読めること」が大切な場面では、まずUDフォントを試してみるとよいでしょう。

実践のポイント

ターゲットに合わせた書体選びを失敗しないための確かめ方と、よくある疑問をまとめます。

ターゲットに近い人に見てもらう

書体を決めたら、可能であればターゲットに近い人に実際に見てもらいましょう。

制作者は毎日同じデザインを見ているため、読みにくさや違和感に気づきにくいからです。

たとえば、候補の書体で作ったバナーを2〜3案並べ、ターゲットに近い家族や知人に「どれがいちばん読みやすいか」「どんなお店に見えるか」を数秒で答えてもらうだけでも、思い込みに気づけます。

注意点・よくある間違い

  • 「若い世代向けだから」という理由だけで、読みやすさを犠牲にした個性的すぎる書体を本文にまで使ってしまうことがあります。
    個性的な書体は見出しやロゴに留め、本文は読みやすい書体を選びましょう。
    見出しだけ書体を変えて本文より大きくし、本文との差(メリハリ)をつけるのが失敗しにくいコツです(大きさの差のつけ方はジャンプ率で解説しています)。
  • ターゲットへの配慮と、サービスやブランドが伝えたい印象が食い違い、どちらも中途半端になることがあります。
    たとえば高級感を売りにするブランドが、親しみやすさを狙ってポップ体を使うと、ブランドの価値が伝わりにくくなります。
    ブランドの印象に合う書体を決めて、どの媒体でもそろえる方法はブランドとタイポグラフィで解説しています。
  • 高齢の方向けのデザインで、書体だけを変えて文字サイズや太さはそのまま、ということがあります。
    読みやすさは書体・サイズ・太さ・文字色のコントラスト(背景との明るさの差)の組み合わせで決まるので、あわせて見直しましょう(コントラストはコントラスト比とは?で解説しています)。
    たとえば白い背景に薄いグレー(#aaaaaa)の文字はコントラスト比が約2.3:1しかなく、UDフォントに変えても読みにくいままです。濃いグレー(#333333、約12.6:1)のように、背景とはっきり差をつけましょう。
  • ターゲットを「全員」にしてしまい、どの書体を選んでも決め手がなくなることがあります。
    まずはいちばん届けたい相手を一人に絞って思い描きましょう。

よくある質問

  • Q. ターゲットの年齢層が幅広い場合はどうすればいい?
    A. いちばん読みにくさを感じやすい層(多くの場合は年齢の高い層)に合わせて読みやすさを確保し、印象づけは見出しやロゴの書体で行うのがおすすめです。
    本文を読みやすいゴシック体やUDフォントにしておけば、どの年齢層にも大きく外れません。
  • Q. 女性向け・男性向けで書体を変えるべきですか?
    A. 性別だけで書体を決めるのはおすすめしません。
    同じ女性向けでも「やさしい」「かっこいい」「上品」など求められる雰囲気はさまざまなので、年齢・業種・トーンから考えたほうが狙いがぶれにくくなります。
  • Q. ターゲットに合う書体の候補が多すぎて選べません。
    A. 本文の書体は読みやすさで1つに決め、見出し用の書体だけを2〜3案で比べると迷いにくくなります。
    比べるときは、同じキャッチコピーを各書体で並べてターゲットに近い人に見てもらいましょう。
    本文と見出しの書体を決める手順全体は、見やすいフォントの選び方で解説しています。

まとめ

ターゲットに合わせた書体選びとは、制作者の好みではなく、デザインを届けたい相手が親しみを感じ、読みやすいと感じる書体を選ぶ考え方です。

年齢層で読みやすさの基準を決め、業種でターゲットが期待するイメージに合わせ、最後にトーン(伝えたい雰囲気)で書体を絞り込むと、狙いどおりに伝わるデザインに近づきます。

まずは今作っているデザインのターゲットを一人の人物として書き出し、その人が今の書体を読みやすく、心地よく感じるかを想像してみてください。