カフェのロゴやイベントのバナーで見かける、手書き風や筆文字のような個性的な文字を、自分のデザインにも取り入れてみたいと思ったことはありませんか。
こうした書体は「装飾書体(装飾フォント)」と呼ばれ、うまく使えば文字だけでデザインの雰囲気をがらりと変えられます。
一方で、使う場所を間違えると、読みにくく安っぽい印象になってしまうこともあります。
この記事では、装飾書体とは何か、手書き風・筆文字・ポップ体などの種類ごとの特徴と使いどころ、使うときの注意点を初心者向けに解説します。
装飾書体の基本
まずは装飾書体の意味と、代表的な種類ごとの特徴を押さえましょう。
装飾書体とは何か
装飾書体とは、手書き風・筆文字風・レトロ風など、特定の雰囲気や世界観を文字の形そのもので表現するために作られた書体のことです。
ここでいう「書体」とは、文字の形のデザインの系統のことで、明朝体やゴシック体のような分類や、ひとつひとつのデザインを指します(フォントとの違いはフォントと書体の種類で解説しています)。
明朝体やゴシック体のような標準的な書体は、どんな内容にもなじむように癖を抑えて作られています。
それに対して装飾書体は、あえて強い個性を持たせることで、「あたたかい」「和風」「にぎやか」といった印象を、読む前の段階から伝えられます。
装飾書体は、見出しやタイトルのように大きく見せる場面のための「ディスプレイ書体」の一種として扱われることが多く、デザイン書体と呼ばれることもあります。
ディスプレイ書体のうち、特に手書き感やレトロ感など特定のテイストを強く打ち出したものが装飾書体だと考えると分かりやすいでしょう。
装飾書体の主な種類と特徴
装飾書体にはたくさんの種類がありますが、初心者はまず代表的なものの特徴と、受ける印象を知っておくと選びやすくなります。
| 種類 | 特徴 | 与えやすい印象 | 使いどころの例 |
|---|---|---|---|
| 手書き風 | ペンや鉛筆で書いたような、線の揺れや不ぞろいさがある | 親しみやすい、あたたかい、手作り感 | カフェ・雑貨店のロゴ、手作り商品のパッケージ、SNS画像 |
| 筆文字(筆書体) | 毛筆で書いたような、線の強弱やかすれ、はらいがある | 和風、伝統的、力強い、勢いがある | 和食店・和菓子の看板、日本酒のラベル、お祭り・スポーツのポスター |
| ポップ体 | 丸みがあって太く、店頭に貼るPOP(手書きの売り場広告)のような形 | にぎやか、楽しい、気軽 | セールの告知、子ども向けのチラシ、イベントのお知らせ |
| スクリプト体(欧文の筆記体) | 文字どうしが流れるようにつながる、ペン書きの英字 | エレガント、上品、華やか | 結婚式の招待状、ブライダル・美容系のロゴ、ギフト用パッケージ |
| ブラックレター | 中世ヨーロッパの写本の文字に由来する、太く角ばった英字 | 重厚、クラシック、伝統的 | ビールのラベル、伝統を打ち出す店名、音楽・ファッションのロゴ |
ブラックレターは、Google Fontsの用語集でも、中世ヨーロッパで生まれた・広まった書体に関する歴史的な分類と説明されています(Google Fonts Knowledge「Blackletter」(英語))。
普段の生活では、英字新聞の題字や、ゴシック調のファッション・音楽のロゴなどで見かける、とがった形が特徴の重厚な英字です。
また、スクリプト体は、ペンで文字をつなげて美しく書く西洋の手書きの技法(カリグラフィー)を、書体として使えるようにしたものです。
同じ言葉でも、書体を変えるだけで受ける印象は大きく変わります。
Sweet Cafe
標準的なサンセリフ体:すっきり、癖がない
Sweet Cafe
手書き風:親しみやすく、あたたかい
Sweet Cafe
スクリプト体:エレガントで華やか
※見え方はお使いの環境に入っているフォントによって変わります
左の見本は癖のないすっきりした印象、中央は手書きのような親しみやすい印象、右は筆記体による上品で華やかな印象になり、同じ「Sweet Cafe」でもお店のイメージがまったく違って見えます。
左の見本の「サンセリフ体」とは、線の端に「セリフ」と呼ばれる小さな飾りがない、すっきりした欧文書体のことで、日本語のゴシック体に近い位置づけです(詳しくはセリフ体・サンセリフ体とはで解説しています)。
なお、日本語の装飾書体はパソコンやスマートフォンに最初から入っていないことが多いため、ここでは多くの環境で表示できる英字の書体で見本を作っています。
Webサイトで日本語の装飾書体を使うときは、Webフォントや、文字を画像にする方法などを検討することになります。
Webフォントとは、書体のデータをインターネット経由で読み込み、見る人のパソコンやスマートフォンに入っていない書体でも表示できるようにする仕組みです(Webフォントとは参照)。
ただし日本語の書体は文字の数が多く、データが重くなりやすいので、使う文字を絞るなどの工夫が必要です(日本語Webフォントとは参照)。
装飾書体の使い方
ここからは、装飾書体をデザインに取り入れるときの手順とコツを紹介します。
まず伝えたい雰囲気を言葉にする
装飾書体を選ぶ前に、デザインで伝えたい雰囲気を「あたたかい」「高級」「和風」のような言葉で決めておくのが近道です。
装飾書体は印象を伝える力が強いぶん、雰囲気に合わないものを選ぶと、ちぐはぐさも強く伝わってしまうからです。
たとえば、手作りのパン屋さんなら手書き風、老舗の和菓子店なら筆文字、子ども向けの夏祭りならポップ体、というように、言葉にした雰囲気と上の表の「与えやすい印象」を照らし合わせて候補を選びます。
書体ごとの印象の違いは、書体による印象の違いでも見本つきで解説しています。
写真やイラスト、配色など、他の要素の雰囲気ともそろえると、デザイン全体に統一感が生まれます。
このように、色・写真・文字などの雰囲気に統一感を持たせるためのルールを「トーン&マナー(トンマナ)」と呼びます。
制作物全体の雰囲気をそろえる「トーン&マナー」の考え方は、トーン&マナーとは?で解説しています。
使う場所はロゴ・タイトルなどに絞る
装飾書体は、ロゴ、タイトル、キャッチコピーなど、短くて大きく見せる部分にだけ使うのが基本です。
個性が強い形は、ひと目で雰囲気を伝えるのは得意ですが、長い文章をすらすら読ませるのには向いていないためです。
Wedding Party
Please join us for dinner and dancing on Saturday, June 6. Reception starts at 5:30 pm at the Garden Hall.
OK:タイトルだけ筆記体、案内文は読みやすい書体
Wedding Party
Please join us for dinner and dancing on Saturday, June 6. Reception starts at 5:30 pm at the Garden Hall.
NG:案内文まで筆記体で、日時や場所が読み取りにくい
左の見本はタイトルだけを筆記体にして華やかさを出し、日時や場所などの大事な情報は読みやすい書体で伝えています。
右の見本は案内文まで筆記体にしたため、雰囲気は出ていても、肝心の日時や場所を読み取るのに時間がかかってしまいます。
日本語のデザインでも同じで、見出しは筆文字やポップ体にしても、本文や価格・日付・注意事項などは明朝体やゴシック体で組むのが安全です。
標準的な書体と組み合わせてメリハリをつける
装飾書体は、標準的な書体と組み合わせることで、より引き立ちます。
全体が個性的な書体ばかりだと、どこが一番目立たせたい部分なのか分からなくなってしまうからです。
組み合わせるときは、次のポイントを意識しましょう。
- 1つのデザインで使う装飾書体は、基本的に1種類にしぼる。
手書き風と筆文字のように雰囲気の違う装飾書体を混ぜると、世界観がぶつかってまとまりがなくなります。 - 組み合わせる本文の書体は、癖の少ないゴシック体や明朝体にする。
装飾書体の個性が、落ち着いた本文との対比で際立ちます。 - 装飾書体は大きく、本文は小さく、とサイズの差をはっきりつける。
見出しと本文の役割の違いがひと目で分かるようになります(ジャンプ率参照)。
既製の装飾書体では表現しきれない場合は、文字の形を自分でデザインする「レタリング」という方法もあります(レタリング入門参照)。
実践のポイント
装飾書体を使うときに陥りやすい失敗と、よくある疑問をまとめます。
注意点・よくある間違い
- 「おしゃれだから」と、本文や説明文まで装飾書体にしてしまう。
個性の強い書体は長い文章では読みにくくなるので、本文には標準的な書体を使いましょう。 - 価格・日付・電話番号など、正確に読み取ってほしい情報に装飾書体を使ってしまう。
書体によっては、0(ゼロ)とO(オー)、1(イチ)とl(エル)の区別がつきにくく、手書き風では1と7を見間違えることもあります。
大事な情報ほど読みやすい書体で示しましょう(数字の書体の選び方は数字・記号の扱い参照)。 - デザイン全体の雰囲気と合わない装飾書体を選んでしまう。
たとえば高級感を出したいサイトにポップ体を使うと、ちぐはぐで安っぽい印象になりがちです。
届けたい相手に合わせた書体の選び方は、ターゲットに合わせた書体選びで解説しています。 - 雰囲気の違う装飾書体をいくつも混ぜてしまう。
装飾書体は1種類にしぼり、残りは標準的な書体でまとめましょう。 - 利用条件を確認せずに使ってしまう。
無料で配布されている書体でも、「個人の趣味には使えるが、お店の宣伝や販売する商品には使えない(商用利用不可)」「ロゴには使えない、ロゴの商標登録は認めない」といった制限があるものもあります。
使う前に、配布ページや付属のライセンスのファイルで必ず利用条件を確認しましょう(フォントライセンスとは参照)。
よくある質問
- Q. 装飾書体とディスプレイ書体は何が違う?
A. はっきりした線引きはありませんが、ディスプレイ書体は見出しなどを「大きく見せるための書体」全般を指すことが多い言葉です。
その中でも、手書き風やレトロ風など特定のテイストを強く表現するものを装飾書体と呼ぶ、と整理すると分かりやすいでしょう。 - Q. 装飾書体はどこで探せる?
A. 書体の配信サービスで、分類を絞り込んで探すのが手軽です。
たとえばGoogle Fontsには、手書き風の書体をまとめた「Handwriting」や、見出し向けの書体をまとめた「Display」という分類があります。
どのサービスで入手した場合も、商用利用などの条件は必ず各書体の規約で確認しましょう。 - Q. 丸ゴシック体も装飾書体?
A. 丸ゴシック体は、線の端を丸くしたゴシック体で、やわらかい印象を与えますが、一般的には本文にも使える標準的な書体の仲間として扱われます。
装飾書体ほど癖が強くないので、やさしい雰囲気を出しつつ読みやすさも保ちたいときの選択肢になります。
同じく親しみやすさを出せるポップ体はにぎやかさを出したい短いタイトルや告知向き、丸ゴシック体はやさしい雰囲気のまま本文まで使いたいとき向き、と使い分けると迷いにくくなります。
まとめ
装飾書体とは、手書き風・筆文字・ポップ体・スクリプト体など、特定の雰囲気や世界観を文字の形で表現するための書体です。
伝えたい雰囲気に合う種類を選び、ロゴやタイトルなど短く大きく見せる部分にだけ使い、本文は標準的な書体と組み合わせることが、装飾書体を上手に使うポイントです。
まずは街のお店の看板や商品パッケージを見て、どんな装飾書体がどんな雰囲気を出すために使われているかを1つ観察してみてください。


























